タイトル
第56巻第3号目次 In Japanese

─ 編集後記 ─

編集後記

矢野 篤次郎
国立病院機構別府医療センター

今年も早,半年が過ぎました.4月に熊本県で発生した大地震で被災された皆さまには心よりお見舞い申し上げます.一日も早い復興をお祈りいたしております.一方で,5月末にはオバマ米国大統領の広島訪問という歴史的なビッグニュースもあり何かと騒がしい申年前半でした.肺癌診療においても,昨年末に,薬価収載されたニボルマブが本格的に使用され,さらに本年6月にはオシメルチニブが薬価収載され新たな時代を迎えた半年でした.このような時期に発刊された本号には原著2編,症例報告8編および第30回集検セミナー記録2編の計12編の論文が掲載されています.原著の2編はいずれも単施設の後向き研究ではありますが,肺癌患者の高齢化が進むなかで注目に値する論文です.日下らの高齢者EGFR遺伝子変異陽性肺癌におけるゲフィチニブの有効性と安全性の検討では,約半数の症例で減量・中止となっていたとの問題提起です.本野らの肺葉切除不耐術能の早期肺癌に対する縮小手術か定位放射線治療かの選択は世界的にもなかなか無作為比較試験が成就せず一律的な結論が出ない問題です.いずれの問題も症例ごとにさじ加減が必要な症例が対象であり,治療方針の基となるエビデンスをどのレベルに求めるのかがポイントです.症例報告では,EGFR-TKI治療増悪後の気管支鏡下再生検で組織診断陰性でありながら細胞診断陽性かつT790M変異陽性であった症例の報告もあり,オシメルチニブが承認された今非常に気になる報告です.その他,皮膚筋炎などの腫瘍随伴症候群やG-CSF産生を伴う腫瘍に関する報告が3報あり,あらためてその予後の悪さを痛感させられました.逆にHIV感染症や肺血管筋脂肪腫・肺リンパ脈管筋腫症合併といった臨床的問題があっても適切に対応すればよい結果が期待されるといった報告や,様々な事情で化学療法を施行し局所再燃を来したIA期小細胞肺癌に対して切除を行った症例やクリゾチニブ薬疹に対する減感作療法にて再投与可能になった症例といった希少な経験は興味深く実臨床に役立つものでした.ご投稿頂いた先生方,貴重なご報告を有難うございました.またご多忙な中,査読頂いた先生方に深謝申し上げます.

肺癌 56 (3):256─256,2016

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