タイトル
第56巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

原発性か転移性かの判断に苦慮した肺絨毛癌の1例

高田 昌彦1, 眞庭 謙昌2
1北播磨総合医療センター呼吸器外科, 2神戸大学大学院呼吸器外科学分野

背景.絨毛癌は通常,妊娠時の絨毛細胞から発生する腫瘍である.一方極めて稀だが肺原発の報告もある.今回その発生に関し,肺原発か転移性かの判定に苦慮した肺絨毛癌の1例を経験したため,報告する.症例.36歳女性,2度の正常分娩の間に胞状奇胎の治療歴あり.検診で右肺に境界明瞭な26 mmの腫瘤を指摘された.翌月無月経となり婦人科を受診,妊娠反応陽性で血中hCGは高値だが,胎芽は認められなかった.検診の4ヶ月後,右肺腫瘤は31 mmに増大,気管支鏡検査では確定診断に至らず,FDG-PETではSUV max 8.73の高集積を認めたが,肺門や縦隔リンパ節および骨盤腔などの他部位に集積を認めなかった.悪性腫瘍を疑い右下葉切除を施行した.組織学的に絨毛癌と診断され,化学療法を3コース施行した.血中hCGは術直後より正常化し,術後1年再発を認めていない.本症例は当初奇胎の肺転移と肺原発の鑑別が問題となった.しかし妊娠歴と肺原発の頻度が極めて低いことから絨毛細胞由来と判断,さらに奇胎掻爬後に血中hCGは正常化し,その後に挙児歴があることから,奇胎由来ではなく,その後の妊娠時の絨毛組織由来と考えた.
索引用語:肺絨毛癌, 胞状奇胎, 肺腫瘍

受付日:2015年12月30日
受理日:2016年4月19日

肺癌 56 (4):268─272,2016

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