タイトル
第56巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

肺胞上皮置換性の発育を示し粘液産生性肺腺癌との鑑別を要した膵癌肺転移と原発性肺腺癌を同時に切除した1例

柳川 直樹1, 安孫子 正美2, 塩野 知志2, 刑部 光正1, 緒形 真也1, 田村 元3
山形県立中央病院 1病理診断科, 2呼吸器外科, 3国保旭中央病院中央検査科

背景.治療成績の向上,各種医療機器の発達,高齢化などにより重複癌が見つかる割合は増加している.症例.75歳女性.膵癌術後follow up中,胸部異常陰影を指摘された.胸部CTでは右S2に径10 mmの境界が比較的明瞭で内部はすりガラス様の陰影を伴う腫瘤が,右S5及び右S8にそれぞれ径5 mmほどの円形小腫瘤が認められた.S2,S5,S8の肺腫瘤に対し部分切除を施行した.病理組織学的検査ではS2の腫瘤は肺胞上皮を置換するようにクララ細胞に類似する腫瘍細胞の増生が見られ,粘液非産生性の原発性上皮内腺癌と診断されたが,一方でS5,S8の腫瘤は両者ともに核が基底側に偏位し粘液を有する高円柱状の腫瘍細胞が肺胞上皮置換性に増生していた.粘液産生性肺腺癌と膵癌肺転移の鑑別のためKRAS遺伝子変異検査を行ったところ,膵癌とS5,S8の肺腫瘤からKRAS exon 2の遺伝子変異(G12D)が同定され膵癌肺転移と診断された.結論.膵癌術後の多発肺腫瘤に対し部分切除を行い,粘液産生性肺腺癌との鑑別を要した膵癌肺転移と原発性肺腺癌が同時に存在した1例を経験したので報告した.
索引用語:転移性肺腫瘍, 原発性肺腺癌, 膵癌, 同時切除

受付日:2016年2月7日
受理日:2016年4月26日

肺癌 56 (4):284─289,2016

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