タイトル
第56巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

無治療で陰影の縮小を認めた肺多形癌の1例

片山 公実子1, 岡田 あすか1, 村上 伸介1, 竹中 英昭1, 西村 元宏2, 長 澄人1
大阪済生会吹田病院 1呼吸器内科, 2呼吸器外科

背景.肺多形癌は血痰や喀血を認めることが多い.症例.46歳女性.約3週間前から血痰が持続するため近医を受診し,右S1の嚢胞に接して結節状陰影とその周囲に非区域性の浸潤影を認めたため当院に紹介された.気管支鏡検査時には右上葉の陰影は嚢胞周囲に壁肥厚を残して縮小しており,擦過細胞診のみ施行したが悪性細胞は検出されなかった.2ヶ月後に再度血痰が出現し,CTでは右S1の嚢胞の壁肥厚が増悪していた.右B1aより経気管支肺生検を施行して肺扁平上皮癌と診断し,その後施行したFDG-PET/CTでは右上葉の嚢胞の壁肥厚に一致して集積を認めた.全身検索の結果,cT1bN0M0,stage IAと診断し右肺上葉切除術を施行した.腫瘍は上皮性腫瘍の他に,紡錘細胞や巨細胞を特徴とする肉腫様成分を多数認め,肺多形癌と診断した.また壊死組織が多くの血管を巻き込み出血領域が拡大,吸収を繰り返したため無治療で陰影の縮小を認めたと考えられた.結語.肺多形癌は血管新生に富み,易出血性であることから,陰影が自然縮小しても悪性の可能性を考慮し積極的に診断を進めるべきであると考える.
索引用語:肺多形癌, 血痰, 喀血, 血管新生

受付日:2016年2月2日
受理日:2016年5月3日

肺癌 56 (4):297─302,2016

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