第56巻第4号目次 | Japanese/English |
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─ 症例 ─
ステントグラフト内挿術により切除可能であった大動脈浸潤肺癌の1例
小林 零1, 永山 加奈1, 高橋 保博1, 川野 亮二1, 数野 圭2, 村田 聖一郎2板橋中央総合病院 1呼吸器外科, 2心臓血管外科
背景.過去の報告によると,大動脈合併切除術はmortality 12.5%,morbidity 31%と周術期リスクが高いものの,リンパ節転移がない症例であれば5年生存率が70%であるといわれている.周術期リスク軽減が可能であれば,大動脈浸潤肺癌に対する大動脈合併切除は有望な治療法とも考えられる.症例.76歳男性.左上葉に径3.2×3.0 cm大動脈弓部および後縦隔に接する腫瘤影を認めた.全身精査の結果,扁平上皮癌cT4N0M0 stage IIIAと診断された.審査胸腔鏡により大動脈浸潤を確認したのち,ステントグラフト留置術を施行した.留置3週間後に左肺上葉切除術+大動脈合併切除を施行し,術後10日目に退院した.最終病理結果では,moderately differentiated squamous cell carcinoma,E0,D0,Pl3,PM0,pT4N0M0であった.大動脈外膜までの肺癌浸潤が存在したが,完全切除が確認された.結論.ステントグラフトを術前に大動脈内に留置することで,大動脈浸潤肺癌に対する根治術を安全に施行可能であった.
索引用語:ステントグラフト, 大動脈, 浸潤, 肺癌, 切除
受付日:2016年3月8日
受理日:2016年5月17日
肺癌 56 (4):303─307,2016