第56巻第4号目次 | Japanese/English |
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─ 症例 ─
アレクチニブ中止後に急速に増悪し,クリゾチニブが著効したALK陽性肺腺癌の1例
倉重 理絵1, 坂下 博之1,2, 東 盛志1, 内堀 健1, 木原 淳3, 稲瀬 直彦11東京医科歯科大学附属病院呼吸器内科, 東京医科歯科大学 2臨床腫瘍学分野, 3医歯学総合研究科包括病理学
背景.本邦では肺癌治療においてALK阻害剤2剤が使用可能であるが,その耐性化が問題となっている.症例は37歳,女性.肺腺癌,cT2aN3M0,Stage IIIB,ALK転座陽性の診断で,アレクチニブを開始した.約4か月半PRを維持したが,PDとなったためシスプラチンとペメトレキセドによる化学療法に切り替えた.Day 16より発熱,CRP上昇,急速なリンパ節の増大を認めた.アレクチニブを再投与したところ一部のリンパ節や肝転移は縮小したが,他のリンパ節は増大した.右鎖骨上リンパ節で行った再生検組織では,診断時の肺生検組織と比較して,ALK陽性癌細胞のうちMET増幅が陽性の細胞の割合が増加していた.クリゾチニブに変更したところ,すべての病変が縮小し,PRを得た.結論.本症例はアレクチニブ中止に伴いdisease flare様の経過を呈した.アレクチニブ再投与下で増大を認めた腫瘍部位では,MET増幅が耐性メカニズムであった可能性もある.耐性獲得の機序についてさらなる研究が望まれる.
索引用語:非小細胞肺癌, ALK, アレクチニブ, クリゾチニブ, フレア
受付日:2016年2月24日
受理日:2016年5月31日
肺癌 56 (4):308─313,2016