第56巻第5号目次 | Japanese/English |
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─ 症例 ─
クリゾチニブで肝機能障害と薬疹を生じたがアレクチニブは安全に投与可能であったALK融合遺伝子転座陽性術後再発肺癌の1例
石橋 直也1, 阿部 皓太郎1, 佐藤 伸之11青森県立中央病院呼吸器外科
背景.クリゾチニブにより薬疹と肝障害を発症した患者への,アレクチニブの安全性は不明である.症例.65歳女性.肺腺癌(cT1aN0M0 Stage IA)の診断で,胸腔鏡下右肺上葉切除術とリンパ節郭清を施行した.pT1aN2M0 Stage IIIAのため術後補助療法を行ったところ,軽度の薬剤性肝障害を生じた.術後約3年後,縦隔リンパ節に再発を認めたため手術検体を用いてEML4-ALK遺伝子検査を行い,転座陽性であった.クリゾチニブ内服約1週間後に薬疹と肝障害を認め,減量・隔日投与を行うも改善なく中止となった.血清CEA値上昇と腫瘍増大を認めたため,放射線治療を行った後にアレクチニブを開始した.腫瘍縮小を示し,肝機能異常も生じていないため治療を継続している.結論.クリゾチニブによる薬疹や肝障害を来しても,アレクチニブは安全かつ有効に使用できた.
索引用語:クリゾチニブ, アレクチニブ, 肝障害, 肺癌, 術後再発
受付日:2015年12月22日
受理日:2016年6月13日
肺癌 56 (5):337─341,2016