第56巻第5号目次 | Japanese/English |
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─ 症例 ─
傍腫瘍性ネフローゼ症候群を合併し化学療法に続き手術を施行しえた悪性胸膜中皮腫の1例
榛沢 理1, 立石 知也1, 小林 正嗣2, 大久保 憲一2, 伊藤 崇3, 稲瀬 直彦1東京医科歯科大学医学部附属病院 1呼吸器内科, 2呼吸器外科, 3病理部
背景.ネフローゼ症候群はしばしば傍腫瘍性症候群として発症することが知られているが,悪性胸膜中皮腫にネフローゼ症候群を合併する症例の報告はわずかであり,治療指針は確立されていない.症例.65歳男性.労作時呼吸困難のため前医を受診し,左胸水が認められた.胸腔鏡下胸膜生検を施行されたが診断はつかなかった.約5か月後,腹痛と全身性浮腫を自覚し,当院を受診した.36.6 g/日の大量の尿蛋白を認め,ネフローゼ症候群と診断した.腎生検で膜性腎症であり,高用量ステロイド療法を行った.悪性腫瘍合併を疑われ,PET-CTを撮像し,左胸膜縦隔側に18F-FDG集積を認めた.同部位の開胸生検により,上皮型悪性胸膜中皮腫と診断した.ネフローゼ症候群に伴う低アルブミン血症のため手術困難であり,化学療法とステロイドの投与を行った.化学療法5コース施行後にネフローゼ症候群の改善を認め,ステロイドを減量し,胸膜切除・肺剥皮術を施行した.手術後に血清アルブミン値がさらに改善し,尿蛋白量も改善した.結論.化学療法と手術によりネフローゼ症候群の改善を認めた,悪性胸膜中皮腫の1例を経験した.
索引用語:ネフローゼ症候群, 膜性腎症, 悪性胸膜中皮腫, 腫瘍随伴性症候群
受付日:2016年3月18日
受理日:2016年6月13日
肺癌 56 (5):342─348,2016