タイトル
第56巻第5号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

肺MAC症治療薬によるゲフィチニブ血中濃度の変動を測定しつつ治療した肺癌の1例

伊藤 浩1, 中根 茂喜2, 中村 さや3, 神山 潤二4, 町田 和彦1, 松尾 正樹1
労働者健康安全機構中部労災病院 1呼吸器内科, 2薬剤部, 3国立研究開発法人国立長寿医療研究センター呼吸器科, 4公益財団法人がん研究会有明病院呼吸器センター

背景.肺癌および非結核性肺抗酸菌症(肺NTM症)は増加傾向で,両疾患の合併例の増加も見込まれる.両疾患の治療薬には薬物相互作用が知られている.肺癌治療Gefitinibの血中濃度はCYP3A4誘導剤のリファンピシンやリファブチン(RBT)で低下,CYP3A4阻害薬のクラリスロマイシン(CAM)で上昇し得るため注意を要する.症例.72歳男性.右上葉肺腺癌stage IV,EGFR遺伝子変異陽性の診断でGefitinibを投与中,進行性の肺NTM症で治療を要した.薬物相互作用が懸念され,Gefitinibの血中濃度を測定した.Gefitinibの血中濃度は,RBT併用で60%に,RBT+CAM+エタンブトールの3剤併用で130%に変動した.併用治療は肝機能障害のため継続困難であった.CYP3A4で代謝のないAfatinibも肺NTM症治療薬と併用を試みたが,副作用で継続困難であった.結論.進行肺癌の予後は改善傾向にあり,肺NTM症合併の治療が必要な症例の増加も見込まれるが,薬物相互作用の観点で検討が必要と考えられる.
索引用語:肺癌, Gefitinib, リファンピシン, CYP3A4, 非結核性抗酸菌症

受付日:2015年12月21日
受理日:2016年6月27日

肺癌 56 (5):355─360,2016

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