タイトル
第56巻第5号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

葉間進展形態を呈し緩徐に進行した原発性肺腺癌の1切除例

加藤 陽介1, 松本 勲1, 吉田 周平1, 竹村 博文1, 笠原 寿郎2, 西川 晋吾2
金沢大学 1先進総合外科, 2呼吸器内科

背景.原発性肺癌は一般に肺実質内を進展し,胸膜に浸潤した場合,胸膜播種を起こすことが多い.今回我々は,主に葉間胸膜内を進展する,特異な発育形式を示した原発性肺腺癌の1切除例を経験したので報告する.症例.65歳男性.狭心症の経過観察中に右中肺野の異常陰影を指摘され,当院紹介となった.造影CT検査にて右小葉間裂,大葉間裂に淡い造影効果を伴う連珠状の腫瘤影を認めた.経過で緩徐な増大を示しており,診断および治療目的に切除の方針とした.手術は,右肺上中葉切除および下葉部分切除にND2a-1リンパ節郭清を追加した.病理組織学的に,腫瘍は主に葉間胸膜内に存在していたが,部分的に上葉肺実質内にも分布していた.腫瘍細胞は管腔状や乳頭状に増生しており,免疫染色にてTTF-1陽性,SP-A陽性であったため原発性肺腺癌(pT3N0M0)と診断した.また,EGFR変異陰性,EML4-ALK転座陽性であった.補助化学療法としてUFT内服を継続中であり,術後2年経過し再発を認めていない.結論.原発性肺癌が胸膜内進展形態をとることは稀であり,本症例においては胸膜由来病変との鑑別が困難であった.
索引用語:肺腺癌, 葉間進展, EML4-ALK融合遺伝子

受付日:2016年3月18日
受理日:2016年7月14日

肺癌 56 (5):368─372,2016

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