タイトル
第56巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

術前に肺癌と診断された限局性悪性胸膜中皮腫の1切除例

稲福 賢司1, 諸星 隆夫1, 足立 広幸1, 公盛 啓介1, 津浦 幸夫2, 益田 宗孝3
横須賀共済病院 1呼吸器外科, 2病理診断科, 3横浜市立大学外科治療学教室

背景.限局性悪性胸膜中皮腫は,組織学的および免疫組織化学的にびまん性悪性胸膜中皮腫と類似した所見を示すが,生物学的特徴が異なる稀な腫瘍と報告されている.症例.59歳女性,アスベスト曝露歴なし.関節リウマチで近医通院中に,胸部異常陰影を認め当院を紹介受診した.CTで左肺尖部に5.5 cmの腫瘤を認め,肺尖部胸壁浸潤肺癌の疑いであった.CTガイド下生検で,非小細胞肺癌(cT3N2M0,stage IIIA)の診断となり,化学放射線療法を施行後に左上葉切除と胸壁合併切除を施行した.病理組織学的に,低分化な上皮様異型細胞が充実性に増殖しており,腫瘍は臓側胸膜と壁側胸膜の間に存在していた.肺実質への浸潤は認めなかった.免疫染色では,中皮腫マーカーが陽性,肺癌マーカーが陰性であった.腫瘍の胸膜へのびまん性進展は認めず,限局性悪性胸膜中皮腫と診断した.術後8か月現在無再発生存中である.結論.限局性悪性胸膜中皮腫はびまん性悪性胸膜中皮腫とは異なる病態である可能性がある.今回の治療法の可否の検討のためにも,今後症例の積み重ねによる病態の解明が大きな課題である.
索引用語:限局性悪性胸膜中皮腫, びまん性悪性胸膜中皮腫, 診断, 手術, 予後

受付日:2016年5月11日
受理日:2016年8月9日

肺癌 56 (7):1040─1045,2016

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