タイトル
第56巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

肺葉切除22年後に胸壁転移を認めたALK融合遺伝子陽性肺癌の1例

松本 大資1, 滝沢 宏光1, 高嶋 美佳1, 川上 行奎1, 近藤 和也1, 丹黒 章1
1徳島大学大学院胸部・内分泌・腫瘍外科

背景.肺癌術後に長期間無再発生存し,遠隔臓器に病変の出現を認めた場合,再発であるか新規病変であるのかを判断するのは困難である.今回われわれは肺葉切除の22年後に出現した胸壁腫瘍に対し,anaplastic lymphoma kinase(ALK)融合遺伝子を検索することにより肺癌の胸壁転移と診断した1例を経験したため,報告する.症例.80歳男性.58歳時に肺腺癌(pT4N2M0 Stage III)に対して左肺上葉切除術を施行した.術後補助化学療法を行い,10年間再発を認めず経過観察を終了した.術後22年目に前胸部の無痛性腫瘤が出現し,生検で腺癌の所見であった.TTF-1陽性,ALK融合遺伝子陽性から肺腺癌の転移が疑われ,初回手術の病理標本もALK融合遺伝子陽性であったことから,胸壁転移と診断した.Crizotinibにて治療し腫瘍は縮小したが,薬剤性間質性肺炎を発症し中止した.プラチナ併用レジメンに変更して加療し,現在も経過観察を継続している.結論.術後遠隔期に再発転移を疑う病変が出現した場合,病理組織診断に加えALK融合遺伝子などの遺伝子変異検索を行うことで診断に至る可能性がある.
索引用語:肺癌, ALK, 遠隔期再発

受付日:2016年5月19日
受理日:2016年8月14日

肺癌 56 (7):1046─1050,2016

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