第56巻第7号目次 | Japanese/English |
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─ 症例 ─
全身性強皮症による間質性肺炎の治療経過中に発症し肺炎類似の画像所見を呈した肺小細胞癌の1例
佐塚 まなみ1, 山本 寛1, 臼杵 智江美1, 濱谷 広頌1, 新井 冨生2, 山田 浩和1東京都健康長寿医療センター 1呼吸器内科, 2病理診断科
背景.肺炎類似の画像所見を呈する原発性肺癌として浸潤性粘液性腺癌が知られているが,肺小細胞癌が同様の画像所見を呈することは稀である.また,全身性強皮症と肺小細胞癌の合併例は本邦では既報に乏しい.全身性強皮症の治療経過中に発症し肺炎類似の画像所見を呈した肺小細胞癌の1例を経験したので,報告する.症例.症例は74歳,男性.労作時呼吸困難を主訴に受診し,間質性肺炎,皮膚硬化,自己抗体(抗RNAポリメラーゼIII抗体)陽性などから全身性強皮症と診断され,間質性肺炎に対して副腎皮質ステロイド,シクロホスファミドで加療が行われた.以後,肺の間質影は改善傾向となったが,右肺上葉の胸膜下に非区域性の浸潤影が広がり,肺腺癌が疑われた.しかし,肺生検で小細胞癌の診断に至り,化学療法を行った.結論.全身性強皮症に肺小細胞癌を合併することは稀であり,さらに肺炎類似の画像所見を呈した肺小細胞癌は既報に乏しく,きわめて稀な進展様式と考えられた.また,抗RNAポリメラーゼ抗体陽性の全身性強皮症では,診断時に悪性腫瘍の合併について確認することが重要と考えられた.
索引用語:肺小細胞癌, 浸潤影, 全身性強皮症, 間質性肺炎, 抗RNAポリメラーゼIII抗体
受付日:2016年6月23日
受理日:2016年10月15日
肺癌 56 (7):1057─1063,2016