タイトル
第57巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

診断に難渋した慢性C型肝炎合併肺原発非定型カルチノイド・肝転移の1例

笹原 陽介1, 島袋 活子1, 吉井 千春1, 鳥井 亮1, 野口 真吾1, 矢寺 和博2
1産業医科大学若松病院呼吸器内科, 2産業医科大学医学部呼吸器内科学

背景.肺原発カルチノイドは多血性腫瘍であり,慢性肝炎に合併したカルチノイドの肝転移診断は困難である.症例.65歳男性.1990年に慢性C型肝炎と診断された.2011年の健診で右肺腫瘍,肝腫瘍を指摘され,A病院で気管支鏡検査を施行されたが診断に至らなかった.基礎疾患よりB病院で肝細胞癌が疑われ,肝動脈塞栓術を施行された.C医院で経過観察され,2013年に右肺腫瘍の増大で当院紹介となったが,気管支鏡では診断がつかなかった.肝腫瘍に対して肝生検を施行後,神経内分泌腫瘍の診断となり,肝細胞癌が否定され,画像所見から肺原発カルチノイドの肝転移と診断された.治療としてカルボプラチン,エトポシドの併用化学療法を行ったが肝障害のため継続不能であった.閉塞性肺炎を繰り返したことから右肺腫瘍に対して右中葉切除+リンパ節郭清を施行し,肝転移に対して肝動脈化学塞栓術を2回行った.しかし,徐々に全身状態が悪化し,初診から3年後に永眠した.結論.慢性C型肝炎を合併し肝転移を有する肺原発カルチノイドの症例を経験した.肝腫瘍に対し,患者背景にとらわれずに積極的に肝生検を行うことが確定診断のために重要と考えられる.
索引用語:カルチノイド, 転移性肝腫瘍

受付日:2016年12月26日
受理日:2017年3月24日

肺癌 57 (3):205─210,2017

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