タイトル
第57巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

Osimertinibの治療反応性が病変部位ごとに大きく異なった肺腺癌の1例

森 雅秀1, 澤 信彦1, 細野 裕貴1, 金津 正樹1, 赤澤 結貴1, 矢野 幸洋1
1国立病院機構刀根山病院呼吸器腫瘍内科

背景.OsimertinibはEGFR T790M遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌に有効とされている.症例.診断時77歳女性.左下葉原発の肺腺癌でEGFR遺伝子変異exon19 15塩基対欠失(ex19 15-bp del)あり.右下葉にも結節が存在した.1次治療としてgefitinibを投与し当初は両側ともに縮小,2年後に病勢進行したが,さらに1年継続投与した.引き続きafatinibに切り替え1年投与したが無効であった.左原発巣の再生検での気管支洗浄液はex19 15-bp del,T790Mともに変異陽性であり,osimertinibの投与を開始した.左原発巣は部分寛解,右肺病変は不変であった.しかし,投与開始後から右胸水が出現し,胸水検体はex19 15-bp del陽性,T790M陰性であった.投与2ヶ月後に左水腎症,3ヶ月後に右水腎症で無尿となり経皮的腎瘻作成で対応したが,4ヶ月後に原病増悪で永眠された.結論.EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌において,T790M変異の存在が不均一であれば,異なる病変におけるosimertinibの治療効果に差が出る場合もあり得る.
索引用語:上皮成長因子受容体阻害剤, Liquid biopsy, 尿管閉塞

受付日:2017年2月11日
受理日:2017年3月31日

肺癌 57 (3):211─215,2017

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