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第57巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 総説 ─

中皮腫の診断の新たな局面

廣島 健三1
1東京女子医科大学八千代医療センター

中皮腫の病理診断が難しい理由は類似した組織像を示す腫瘍が存在し,また,反応性病変が類似した所見を示すからである.肺癌は小さな生検標本でも診断が可能であるが,中皮腫は小さな標本では診断が難しいことが多い.早期の中皮腫の診断には,全身麻酔下胸腔鏡による十分な量の生検が必要である.中皮腫は上皮型,二相型,肉腫型に分類される.上皮型中皮腫および二相型中皮腫の診断には,免疫染色で中皮マーカーが陽性で癌腫のマーカーが陰性であることを確認する.肉腫型中皮腫は中皮マーカーが陰性であることが多く,その診断にはサイトケラチンが陽性であることを確認する.また,他の肉腫,肉腫様癌などを鑑別する必要がある.早期の中皮腫の場合は,反応性中皮,線維性胸膜炎などの非腫瘍性疾患との鑑別を行う.この鑑別に,免疫染色によるBAP1蛋白の消失とFISHによるp16のホモ接合性欠失の検討が有用である.胸膜中皮腫の早期には胸水貯留を示すことが多く,体腔液に出現する中皮細胞をセルブロックなどで免疫染色やFISHを検討することにより,中皮腫の診断が可能である.中皮腫診断には,臨床経過,放射線画像,病理所見を総合して判断する必要がある.
索引用語:中皮腫, 免疫染色, FISH, p16, BAP1

肺癌 57 (4):259─271,2017

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