タイトル
第57巻第4号目次 In Japanese

─ 編集後記 ─

編集後記

栗山 啓子
独立行政法人国立病院機構大阪医療センター放射線診断科

今年の夏は猛暑に加えて記録的な豪雨で,川の氾濫など水害のニュースを聞くにつけ,心が痛みます.昔は,台風の被害は沖縄・九州や四国が多く,本州の被害はめったにありませんでした.ましてや北海道に台風の被害がおこるなど,聞いたことがありません.最近耳にする線状降水帯による豪雨はどこにでも発生し,雨雲から逃げようがないので恐ろしい.まだまだ,台風シーズンが続きますので油断はできません.《肺癌》はオンラインのみの和雑誌で,日本語で肺癌の診療に関する情報をup-to-dateに供給しています.そして,投稿される方々は,日々の診療の中での気づき,探索し,そして情報を共有するために時間外や週末の時間を論文作成に費やし,査読の鞭に打ち勝って,やっと産み落とされたわけです.著者と論文には,開口一番《おめでとうございます》ですね.さて,57巻4号(8月号)の巻頭のINVITED REVIEW ARTICLEは,昭和の建築物の解体により今後さらに排出量が増えるアスベストに関連した《中皮腫の診断の新たな局面》について廣島健三先生に執筆していただきました.見出しが格言のようで読み手の記憶に残ります.原書は,外科と放射線診断の2題で,N2症例の診断と治療です.外科治療で治癒が望める早期肺癌と分子標的治療が有効なIV期肺癌の間に,多くのN2症例があり,現時点での指標と思われます.昔(昭和時代)はN2症例の5年生存率50%は越えがたい壁でしたが,現在は集学的治療でその有用性が示されたといえます.これにエールを送るように,N2のCTによる層別化の論文が掲載されています.そして,CASE REPORTが10編と続きます.実地診療は1例1例が教科書であり,学びがあると思います.私は国内外の雑誌の査読を沢山手掛けてきましたが,編集委員をするのは初めてで,また,別の苦労を味わうことになりました.突然の編集後記を依頼され,当惑しているところ,ネットでGoogle検索すると,編集後記の書き方があり,こうしてWORDで作成している次第です.ネット社会は英語で情報発信すると《ピコ太郎のPPAP》に代表されるように,迅速かつ世界中に情報を発信します.医学論文も英文で発表する影響力は地球規模です.しかしながら,日本のみならず母国語が英語でない多くの国々や,母国語で独自の医学の発展を遂げた国々においては,母国語の医学情報の浸透力は計り知れません.わが国では幕末の蘭学に始まり,明治維新を経て150年の母国語での西洋医学の歴史があります.《肺癌》も日本語で理解しやすく情報発信されており,日々の肺癌診療の指標となることを祈念しています.今後も,投稿される方々,査読担当の先生と編集委員を経て,質の高い,日常臨床に役に立つ《肺癌》をお届けできるよう尽力いたしますので,会員や読者の皆様,よろしくお願いいたします.

肺癌 57 (4):338─338,2017

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