タイトル
第57巻第6号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (1422K)
Article in Japanese

─ 症例 ─

自己免疫性肺胞蛋白症に合併した肺腺癌の1切除例

八谷 泰孝1, 中村 祥一1, 森 専一郎2, 井上 直征2, 槇原 康亮3, 内橋 和芳3
九州労災病院 1外科, 2呼吸器内科, 3病理科

背景.自己免疫性肺胞蛋白症は稀で,難病にも指定されている疾患であり,肺癌との合併例の報告は少ない.今回我々は健診で発見された肺癌に肺胞蛋白症を合併していた症例を経験したので報告する.症例.64歳の女性.健診目的の胸部X線検査にて左上肺野に異常陰影を指摘され,当院へ紹介.呼吸器内科の気管支鏡検査で,左肺尖部の結節に対して肺生検を施行されたが診断がつかなかったため,当科へ診断的治療目的で紹介となった.両肺上葉のスリガラス影に対しては,術前の気管支鏡下肺生検にて肺胞蛋白症の診断であった.呼吸機能は正常で症状もなかったため,肺胞蛋白症に対しては治療を行わず,左肺結節に対して,胸腔鏡下肺生検を施行した.術中迅速病理組織診断にて肺腺癌の診断であったので,胸腔鏡下左肺上葉切除,ND2a-2を施行した.術後進行度はpT2aN0M0 pStage IBであった.術中,術後肺胞蛋白症の増悪は認めず,現在,術後補助化学療法施行後,経過観察中である.結論.自己免疫性肺胞蛋白症はGM-CSF自己抗体によって,肺胞マクロファージの機能障害をきたし,発癌に関与している可能性も示唆され,さらなる症例の蓄積が必要である.
索引用語:自己免疫性肺胞蛋白症, 肺腺癌, 外科的切除

受付日:2017年4月17日
受理日:2017年7月22日

肺癌 57 (6):769─774,2017

ページの先頭へ