タイトル
第57巻第6号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

ゲフィチニブにて奏功した慢性骨髄性白血病に合併した肺腺癌の1例

金城 和美1, 高月 清宣1, 川瀬 香保里1, 松本 正孝1, 南 陽介2
1北播磨総合医療センター呼吸器内科, 2神戸大学医学部附属病院輸血・細胞治療部

背景.重複癌は,世界的な高齢者の増加と近年の分子標的薬の開発も含めた癌治療の進歩とともに増加している.重複癌の治療は,優先度,効果と安全性に基づき決定しなければならないが,併存した進行癌に対する分子標的薬どうしまたは殺細胞性抗癌剤との併用の安全に関する情報は症例報告があるのみで,定まった指針がない状況である.症例.慢性骨髄性白血病(CML)に対して,チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)のニロチニブを投与中の61歳の男性が,EGFR遺伝子変異陽性肺腺癌と診断された.進行期肺癌が予後規定因子になると考えられたため,最終的に患者はニロチニブの治療を中止してゲフィチニブの治療を受けることに同意し,結果的にCMLの増悪なしに肺癌治療は奏功した.結論.現在,分子標的薬治療も含めた重複癌に対する治療法のゴールドスタンダードは存在しない.我々は,血液腫瘍内科と連携して肺癌が予後を規定しうると考え,CMLを合併した進行期肺癌の治療を行い,奏功した症例を報告する.重複癌の患者に対して十分な説明を行って同意を得るとともに,他科の専門家とも情報を共有しながら治療を検討することが,非常に重要である.
索引用語:肺腺癌, 慢性骨髄性白血病, チロシンキナーゼ阻害薬, ニロチニブ, ゲフィチニブ

受付日:2017年1月21日
受理日:2017年8月6日

肺癌 57 (6):787─790,2017

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