タイトル
第57巻第6号目次 In Japanese

─ 編集後記 ─

編集後記

後藤 明輝
秋田大学大学院医学系研究科 器官病態学講座

本稿の執筆現在(10月4日)で2017年度ノーベル賞の日本人受賞者はおられませんが,近年日本人のノーベル賞受賞者が明らかに多くなったのは日本国民として大変喜ばしいことです.そのなかで,2000年にノーベル化学賞を受賞された白川 英樹先生が,“日本語で科学を学び,考えることができる幸せ”と題して母国語で研究,思索ができることの重要性や,学問体系自体を和訳してくれた先人への感謝を語っておられます.皆様にお届けする“肺癌”57巻6号を読んで感じることは,まさにそのことです.総説では塩山 善之先生が“肺癌に対する重粒子線治療の現状と課題”と題して治療の未来を,西尾 和人先生が“リキッドバイオプシーに関する現状と課題”で診断の革新を,山口 正史先生が“高齢者非小細胞癌の治療の現状と展望”で待ったなしの高齢化社会における癌診療のあり方を,それぞれ懇切に語ってくださっており,各分野のエキスパートから日本語で学ぶことができることのありがたさをあらためて思います.また,新谷 康先生の原著論文の主旨は明快であり,各症例報告は日常臨床での難解例,稀有例を考える際に指針となるものばかりです.しかし,このような高品質な学術雑誌を日本語で届けることができるのも,レベルの高い論文が投稿され,厳格な査読がなされ,出版が丁寧になされ,多くの読者に読まれて初めて成り立つことで,なかなか楽なことではありません.そのすべての条件が今後も満たされ,“日本語で肺癌に関して学び,考えることができる幸せ”のために,“肺癌”が一つの拠点であり続けてほしいと願う限りです.最後となりましたが,本年も福岡県はじめ,筆者の居住する秋田県などでも洪水被害やそのほか自然災害による被害がありました.読者やその関係者の皆様で被災された方々には心よりお見舞いを申し上げます.

肺癌 57 (6):817─817,2017

ページの先頭へ