タイトル
第57巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

脳転移巣の出現から7年後に顕在化した潜在性肺癌の1例

中島 康裕1,4,5, 小松 有2, 瀧 玲子2, 櫻井 うらら3, 石川 雄一4, 小島 勝雄1
武蔵野赤十字病院 1呼吸器外科, 2呼吸器科, 3病理診断科, 4(公財)がん研究会がん研究所病理部, 5東京医科歯科大学呼吸器外科

背景.原発性肺癌は,原発不明癌として発症する頻度が他臓器癌と比較して高く,しばしば転移巣の発見後に肺の原発巣が顕在化する.しかし,顕在化までの期間が7年にわたった報告は稀である.転移性脳腫瘍が先行し,原発巣である肺癌が長期間潜在した1例を経験したので報告する.症例.60歳男性.2008年に麻痺症状が出現し,精査で多発性脳腫瘍を認め,開頭腫瘍摘出術を施行.組織学的には低分化型腺癌で,転移性病変と考えられたが,全身検索で原発巣を認めず,原発不明癌として経過観察された.2015年に左上葉S1+2のブラ内に54×30 mm大の腫瘤陰影が出現し,左上葉切除+S6合併部分切除+ND2a-1を施行した.組織学的には紡錘形細胞から成る肉腫様成分と乳頭状ないし充実性の腺癌成分が混在し,多形癌(T3N0M1b(BRA),pStage IV)と診断された.肺の腺癌成分は脳転移巣と組織所見および免疫染色所見が一致し,脳転移病巣が先行した潜在性肺癌が,7年後に顕在化したと考えられた.結論.現代の発達した画像検査にも限界があり,原発不明癌においては,長期にわたる慎重な経過観察を要する.
索引用語:潜在性肺癌, 原発不明癌, 脳転移, 肺癌

受付日:2017年6月27日
受理日:2017年9月5日

肺癌 57 (7):838─842,2017

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