タイトル
第58巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

有瘻性膿気胸に対して局所麻酔下胸腔鏡で自己血注入とフィブリンシートを用いて治療した肺扁平上皮癌の1例

田中 悠祐1,2, 高橋 守1, 橋本 みどり2, 本田 泰人3, 山田 玄1, 高橋 弘毅1
1札幌医科大学医学部呼吸器・アレルギー内科学講座, 2NTT東日本札幌病院呼吸器内科, 3札幌西孝仁会クリニック

背景.有瘻性膿気胸は難治性であり,ドレナージと抗菌療法では十分な改善が得られないことが多い.症例.82歳男性.左下葉に空洞性病変を認め精査を行った.胸部CTではS6に径60 mmの腫瘍を認め,生検で肺扁平上皮癌(cT2bN0M0,stage IIA)の診断となった.積極的な治療は希望しなかったため,経過観察を行ったが,肺炎の合併を契機に腫瘍の空洞と胸腔が連続し有瘻性膿気胸を発症した.胸部CTでは瘻孔は径10 mmと推定された.全身状態が不良で外科治療は困難と考えられたため,局所麻酔下胸腔鏡による瘻孔閉鎖術を施行した.鏡視下に鉗子を用いてフィブリン隔壁を可及的に除去した後に,瘻孔から空洞内部に自己血を充填し,フィブリンシートで被覆した.本治療により左気胸は改善した.抗菌薬により肺炎が改善した後に短期間ではあるが自宅に退院することができた.結論.本法は,全身状態の低下などにより外科治療が困難な空洞を伴う有瘻性膿気胸に比較的有効な対処方法になりうると思われた.
索引用語:局所麻酔下胸腔鏡, 有瘻性膿気胸, 自己血癒着

受付日:2017年11月3日
受理日:2017年12月7日

肺癌 58 (1):41─45,2018

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