タイトル
第58巻第2号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

モザバプタン投与後も遷延した肺小細胞癌に伴う難治性抗利尿ホルモン不適合分泌症候群に対し,トルバプタンが奏効した1例

小林 英里佳1, 中西 雄2, 堀益 靖2, 岩本 博志2, 藤高 一慶2, 服部 登2
広島大学病院 1卒後臨床研修センター, 2呼吸器内科

背景.抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)は,ADHの不適切な分泌や腎集合管でのADH感受性の亢進による希釈性低Na血症に起因する症候群で,肺小細胞癌の合併症としてもしばしば経験される.今回,肺小細胞癌に対する化学療法とSIADHに対するモザバプタン内服が一時的に奏効したにも関わらず低Na血症が遷延し,塩分負荷やループ利尿薬も効果不十分な難治性SIADHに対し,トルバプタンが奏効した1例を経験した.症例.73歳男性.201X年5月に進展型肺小細胞癌(cT4N2M1b,Stage IV)とSIADHの合併と診断された.化学療法の抗腫瘍効果は部分奏効で,飲水制限,経口Na補充,フロセミド内服に加えモザバプタン内服で一時的に血清Na値は上昇したが,再度120 mEq/l台に低下した.化学療法5コース目に嘔気を訴え,血清Na 113 mEq/lと低下していたため入院した.入院後にトルバプタン内服を開始し,漸増しつつ7ヶ月にわたり内服を継続したが,明らかな有害事象なく血清Na 130 mEq/l台で安定した.結論.肺小細胞癌に伴う難治性SIADHに対し,トルバプタンは有効かつ安全な治療法となりうる.
索引用語:抗利尿ホルモン不適合分泌症候群, 肺小細胞癌, モザバプタン, トルバプタン

受付日:2017年11月15日
受理日:2018年1月28日

肺癌 58 (2):132─137,2018

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