タイトル
第58巻第2号目次 In Japanese

─ 編集後記 ─

編集後記

坂下 博之
東京医科歯科大学 臨床腫瘍学分野・呼吸器内科

桜も散って,4月も半ばとなり春の学会シーズンが始まりました.学会員の先生方におかれましては準備等にお忙しいことと思います.自分が呼吸器内科医として働き始めた頃は,肺癌は学会にいっても“何も進歩がない”とよく言われていました.しかし,今や数か月単位でどんどんと新しい知見が加わり追いついて行くのがなかなか大変な状況となりました.いろいろなプレスリリースが相次いでいますがこれからAACR,ASCOと国際学会もあり,新たなエビデンスの報告が待ち望まれるところです.肺癌58巻2号では委員会報告1編,総説1編,原著2編,症例8編と盛りだくさんな内容を掲載しています.委員会報告では肺がん検診委員会報告から,肺がん検診セミナーの終了のお知らせがありました.昨今シャーカステンでの寺小屋的読影セミナーが少なくなり寂しくなる一方,今後はAIなどによる画像診断も駆使した検診などに移行していくのではないでしょうか.総説は肺癌の病理コンパニオン診断についてです.本論文では触れられていませんがまもなくBRAF変異のコンパニオン診断としてオンコマインDx Target Test CDxシステムが用いられるようになると思われます.また先進医療としてマルチプレックス遺伝子パネル検査が開始となり,今後はコンパニオン診断におけるその精度管理がより重要になると思われます.原著論文のひとつは頭頸部癌肺転移に関する胸腔鏡手術の成績に関するものです.昨今はoligometastasisに関しては積極的に局所療法を行う傾向にあり,その戦略をサポートするものと思われます.もう一つの原著論文はサルコイドーシスあるいはサルコイド反応合併肺癌に対するEBUS-TBNAの有用性に関する論文です.同様の症例はしばしば経験しますが,N因子は可能な限り組織診断をつけて,手術可能症例の手術機会を逃さないことが重要と考えます.症例報告は8例と盛りだくさんです.新規性はもちろん重要ですが,国内の日本語での学会誌であることも勘案すれば,日々の診療にとって役立つという観点も重要ではないでしょうか.稀な経過の症例,稀な合併症の症例,稀な組織型の症例と同様な症例を経験した際に参考になる症例報告が掲載されています.冊子媒体ではなくなり,ともすれば目に触れにくくなりましたが,是非とも目を通していただきたいと思います.最後に本誌に投稿いただいた先生,査読を担当していただいた先生に御礼申し上げます.

肺癌 58 (2):173─173,2018

ページの先頭へ