タイトル
第58巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

アレクチニブが原発巣と胃転移巣で異なる効果を認めたALK陽性肺癌の1例

石塚 聖洋1,2, 越智 淳一1
1秀和総合病院呼吸器内科, 2東京医科歯科大学医学部附属病院呼吸器内科

背景.ALK陽性肺癌に対しての1次治療には,ガイドラインではアレクチニブが推奨されているが,クリゾチニブ同様耐性化の問題が存在する.また,肺癌胃転移の頻度は稀であり,ALK陽性を確認した胃転移巣の報告はみられない.今回,病変毎に治療反応性が異なる症例を経験し,胃病変に対してアレクチニブ耐性化後の病理学的評価も行ったため,報告する.症例.症例は61歳男性.肺腺癌,cT2aN3M1c,Stage IVB,ALK転座陽性の診断で,アレクチニブによる治療を開始した.原発巣には著効し縮小傾向を1年間保っていたが,治療開始直後から胃転移巣の縮小はみられなかった.治療開始8か月後の内視鏡検査で胃病変の著明な増大と出血がみられ,翌月胃全摘術を施行した.アレクチニブ耐性化後も胃転移巣は免疫染色にてALK陽性であった.結論.本症例ではアレクチニブの効果が原発巣と胃転移巣で異なった.耐性化後も胃転移巣の免疫染色はALK陽性であり,耐性機序の可能性としてMETなどを介したシグナル経路のバイパスの可能性も考えられた.今後,耐性機序同定検査法やそれに基づく適切な耐性獲得後の治療法の確立が期待される.
索引用語:非小細胞肺癌, ALK, アレクチニブ, 胃転移, 耐性

受付日:2018年2月19日
受理日:2018年4月9日

肺癌 58 (3):231─236,2018

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