タイトル
第58巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

背部痛が発見の契機となった若年者肺癌の1例

森本 淳一1, 佐々木 篤志1, 長門 芳1, 菅野 勇2, 木村 秀樹1
千葉県済生会習志野病院 1呼吸器外科, 2病理部

背景.40歳以下の若年者の肺癌は稀であるが,症状を契機に発見されることがある.症例.31歳男性.2年前より時折右背部痛を自覚したが,すぐに軽快するため放置していた.2015年11月,今までにない背部痛を自覚し,持続するため当院救急外来を受診した.胸部X線/CTにて両側に多発する肺嚢胞と,右S2に嚢胞に接する20 mm大の境界明瞭な結節を認めた.嚢胞に接する壁側胸膜の肥厚および癒着を認め,背部痛の原因と考えられた.鎮痛剤を処方したが効果なく,疼痛軽減および結節の診断,治療目的に手術を施行した.胸腔内を観察すると右肺尖部の嚢胞は壁側胸膜と強固に癒着していた.癒着を剥離し,嚢胞を切開すると嚢胞内は黄色の粘液で満ちていた.結節は嚢胞の中枢側に認められ,肺部分切除を施行した.術後背部痛は軽快した.結節は病理検査で腺癌の診断となり,その後再手術にて残存右肺上葉切除術+リンパ節郭清を施行した.病理病期はpT2aN1M0,p-Stage IIBであった.結論.若年者であっても,胸部異常陰影を呈する症例は肺癌の可能性を念頭に精査加療を行うことが重要と考えられた.
索引用語:若年者肺癌, 浸潤性粘液性腺癌

受付日:2017年11月15日
受理日:2018年5月1日

肺癌 58 (4):275─280,2018

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