タイトル
第58巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

ニボルマブ3回投与のみで完全奏効となった肺扁平上皮癌の1例

藤本 栄1, 藤田 敦2, 湊 浩一1, 飯島 美砂3
群馬県立がんセンター 1呼吸器内科, 2呼吸器外科, 3臨床病理検査

背景.ニボルマブは,T細胞発現PD-1と腫瘍発現PD-L1の結合阻害によりT細胞を活性化する,PD-1抗体である.しかし,腫瘍微小環境において免疫抑制細胞のため,ニボルマブ活性T細胞は抑制される.ニボルマブ単剤による完全奏効(CR)は,腫瘍免疫学的には困難と考えられたが,そのCR例が報告されてきている.その中,ニボルマブの3回投与のみでCRとなった肺扁平上皮癌の患者を経験したので報告する.症例.80歳男性.検診異常にて当院初診.精査の結果,左上葉原発の肺扁平上皮癌cT4N3M1a IV期と診断.また,血中好酸球増多と腫瘍組織内好酸球浸潤を認めた.1次治療ドセタキセルを4サイクル投与し,2次治療S-1を3サイクル投与した.その後PDのため,3次治療ニボルマブを3回投与したが,甲状腺ホルモン異常にて中止となった.投与後に血中好酸球が急激に増加し,投与後2ヶ月で原発巣は空洞化,投与後5ヶ月には瘢痕組織のみのCRとなった.投与後21ヶ月においても,再発がなかった.結論.本症例は,ニボルマブ投与により急激な好酸球増多を伴いながらCRとなっており,好酸球がニボルマブの腫瘍免疫応答に関与した可能性がある.
索引用語:ニボルマブ, 免疫チェックポイント阻害剤, 完全奏効, 扁平上皮癌, 好酸球

受付日:2018年4月19日
受理日:2018年5月31日

肺癌 58 (4):292─297,2018

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