タイトル
第58巻第5号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

自己免疫性膵炎に類似した経過を辿ったペムブロリズマブ療法後の非小細胞肺癌の1例

笠原 千夏1, 和田 裕紀子2, 松尾 正樹1, 町田 和彦1, 松下 明弘1, 伊藤 浩1
1独立行政法人労働者健康安全機構中部労災病院呼吸器内科, 2静岡県立静岡がんセンター緩和医療科

背景.ペムブロリズマブの免疫関連有害事象で膵炎は稀とされており,これまでに本邦での報告例はない.症例.46歳,男性.肺腺癌cT3N0M1c,stage IVBと診断された.Tumor proportion score(TPS)が70%であり,1次治療としてペムブロリズマブを投与した.腫瘍縮小効果は見られたが,6コース目の投与後より上腹部痛が出現し,増悪したため救急外来を受診した.膵臓のソーセージ様のびまん性腫大と血中アミラーゼ,リパーゼの上昇を認め,ペムブロリズマブによる膵炎が疑われた.ペムブロリズマブの休薬とメチルプレドニゾロン60 mg/日による加療を開始したところ,3週間ほどで症状は改善し,膵臓腫大やアミラーゼの値も正常まで改善した.この膵炎はIgG4の上昇は認められなかったものの,画像所見,ステロイド反応性の経過は自己免疫性膵炎に類似していた.結論.ペムブロリズマブ投与後に免疫関連有害事象と考えられる膵炎を発症し,自己免疫性膵炎様の画像所見とステロイド反応性を示した1症例を報告した.ペムブロリズマブを使用する際は膵炎の発症が起こり得るため,注意が必要である.
索引用語:自己免疫性膵炎, ペムブロリズマブ, 非小細胞肺癌, 免疫チェックポイント阻害薬

受付日:2018年4月13日
受理日:2018年7月17日

肺癌 58 (5):344─348,2018

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