タイトル
第58巻第5号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

肺扁平上皮癌小腸転移による活動性小腸出血に対しnivolumabが奏効し止血が得られた1例

山本 亜弥1, 岩田 隆1
1関西労災病院呼吸器外科

背景.肺癌多発小腸転移による活動性出血は治療に難渋する.今回我々はnivolumabにより消化管出血を制御し得た症例を経験したので報告する.症例.62歳女性.発熱と右胸背部痛を主訴に当科紹介.胸部CT検査で右肺上葉に9 cm大の腫瘤影を認め,CTガイド下生検で扁平上皮癌と診断.PET/CT検査で2ヶ所の小腸転移を認めた.carboplatinおよびS1併用化学療法を開始したがすぐに黒色便が出現し貧血が急激に進行.小腸内視鏡検査で空腸に出血性腫瘍を2ヶ所認め,生検にて扁平上皮癌と診断したが止血は困難であった.化学療法は中止し,出血に対して外科手術や血管塞栓術も考慮したがリスクが高いと判断し,nivolumabの投与を開始.開始3週目に黒色便は消失し貧血は軽快.6週目の胸部CT検査では主腫瘍の縮小を認めた.結語.免疫チェックポイント阻害薬は細胞障害性抗癌剤による直接の腫瘍壊死を主体とした抗腫瘍効果と違い,本症例のように出血性小腸転移に対して強い壊死や穿孔を起こすことなく止血と腫瘍縮小を得られる可能性があると考えられた.
索引用語:小腸転移, 消化管出血, 肺癌, 免疫療法, 化学療法

受付日:2018年2月26日
受理日:2018年7月27日

肺癌 58 (5):349─355,2018

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