タイトル
第58巻第5号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

肺癌との鑑別が困難であった孤立性肺毛細血管腫の1例

奥野 翔子1, 若月 悠祐1, 福井 哲矢1, 松倉 規1
1福井赤十字病院呼吸器外科

背景.CT検査の普及によりスリガラス陰影(ground-glass opacity:GGO)を呈する原発性肺癌の手術症例は増加傾向にある.今回われわれはCTにてGGOを指摘され経過観察するも縮小せず,肺癌疑いとして胸腔鏡下肺切除術を施行したところ,孤立性肺毛細血管腫の病理診断を得た症例を経験したため報告する.症例.51歳女性.散在性脳梗塞・深部静脈血栓症の精査で行った胸部CTで偶然,左S9に16×16 mm大の円形で内部濃度均一なGGOを指摘された.深部静脈血栓の治療後,肺癌疑いとして診断と治療を兼ねて手術の方針となった.腫瘤は視診では局在不明,触診にて1 cm程度の軟らかい結節を左肺下葉S9に触知した.20 mm以下のpure GGOの肺癌疑いとしての積極的縮小手術の適応と考え,胸腔鏡下肺底区域切除を施行した.最終病理診断は,肺胞隔壁の拡大と拡張毛細血管の密在がみられ,孤立性肺毛細血管腫であった.術後経過は良好で現在まで再発はない.結果.孤立性肺毛細血管腫は原因不明の稀な疾患で,予後良好であると考えられている.高分化型腺癌との鑑別が困難であり,肺癌との鑑別がつかず切除されている報告が多い.本症例を経験し,文献的考察を添えて報告する.
索引用語:孤立性肺毛細血管腫, 肺癌, スリガラス陰影

受付日:2018年3月10日
受理日:2018年8月17日

肺癌 58 (5):356─359,2018

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