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第58巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 総説 ─

KRAS変異陽性肺がんの薬物療法は開発されるか?

堀尾 芳嗣1,2
愛知県がんセンター中央病院 1外来部, 2呼吸器内科部

創薬不能と言われてきたRASがん遺伝子は,ヒトがんにおける最も高頻度(約25%)に変異している相同性の高い3つの遺伝子からなる遺伝子ファミリーである.肺がんでは,KRAS遺伝子の主にコドン12,13,あるいは61でミスセンス(点)突然変異が生じ,欧米の腺がんの約30%,日本の腺がんの約10%程度で変異が見つかっている.がんの成長と発達を促進する活性化変異RASに対する研究と治療開発が行われてきたが,1980年代のRASがん遺伝子発見から臨床的に有効な治療薬が30年以上見つかっていない.米国の国立がん研究所(National Cancer Institute)がRASがん遺伝子の細胞シグナル伝達経路を標的とした薬剤開発を目指して2013年にRASイニシアティブを立ち上げたことで,さらに研究が進んでおり,近い将来治療法も確立すると思われる.ここでは,抗RAS薬の過去と現状を述べる.
索引用語:肺がん, KRAS, 分子標的治療, MAPK経路

肺癌 58 (7):953─958,2018

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