タイトル
第58巻第7号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

EGFR遺伝子変異陽性の肺癌とPD-L1強陽性の肺癌を合併した1例

林 康之1, 川井 隆広1, 恒石 鉄兵1, 橋本 教正1, 岩坪 重彰1, 西村 尚志1
1京都桂病院呼吸器センター呼吸器内科

背景.肺癌領域においてEGFR遺伝子変異に代表されるドライバー遺伝子変異や,PD-L1を介した免疫逃避機構が注目されている.症例.57歳,男性.右上葉の35 mm大の腫瘤,右下葉の17 mm大の結節,鎖骨上窩と縦隔の多発リンパ節腫大を認め,縦隔リンパ節から生検を行い右上葉原発の肺腺癌cT4N3M0 Stage IIIC(EGFR exon21 L858R陽性,PD-L1陰性)と診断した.アファチニブ内服を開始したところ右下葉の腫瘍と鎖骨上窩や縦隔のリンパ節は縮小した一方,右上葉の腫瘍は増大を続けた.右上葉の腫瘍から生検を行った結果,再び腺癌が検出されたがEGFR遺伝子変異は陰性でPD-L1が90%陽性であった.右上葉腫瘍は肺腺癌cT2aN0M0 Stage IB(EGFR遺伝子変異陰性,PD-L1強陽性),右下葉腫瘍は肺腺癌cT1aN3M0 Stage IIIC(EGFR exon21 L858R陽性,PD-L1陰性)という,多発肺癌と診断した.結論.複数の病変の間で治療に対する反応性が異なる場合,多発癌や形質転換などを考慮して積極的に病理組織を採取することが望ましい.
索引用語:EGFR, PD-L1, 多発肺癌

受付日:2018年8月21日
受理日:2018年10月2日

肺癌 58 (7):984─988,2018

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