第59巻第1号目次 | Japanese/English |
Full Text of PDF (1340K) Article in Japanese |
─ 症例 ─
多形癌と粘表皮癌を併発した同時性多発肺癌の1例
森 將鷹1, 井上 政昭1, 本多 陽平1, 岡 壮一1, 吉田 順一11下関市立市民病院呼吸器外科
背景.肺癌で多形癌と粘表皮癌はともに比較的稀な組織型である.それぞれが孤発する例は時折経験するが,今回同時に併発した症例を経験したため報告する.症例.倦怠感を主訴とした74歳男性.胸部CTで左下葉S6に62 mmとS9に65 mmの不整形腫瘤を認めた.2つの腫瘍は辺縁が比較的滑らかな充実性結節で,ともにスリガラス陰影を一部に伴って,画像的に類似した陰影を呈していた.気管支鏡でB9から生検し悪性細胞が検出された.重複癌と肺内転移の両方の可能性が考えられたが,同一肺葉内であるため左下葉切除と縦隔リンパ節郭清(ND2a-1)を施行した.病理診断はS6腫瘍が多形癌pT3N0M0 stage IIB,S9腫瘍が粘表皮癌pT4N0M0 stage IIIAの結果であった.リハビリテーションを施行し術後2週間で退院した.結論.今回,稀な組織型である多形癌と粘表皮癌の同時多発例を経験した.多発肺結節である時は肺内転移だけでなく常に多発癌の可能性も考えておく必要がある.
索引用語:肺癌, 多形癌, 粘表皮癌, 同時多発癌
受付日:2018年8月6日
受理日:2018年11月14日
肺癌 59 (1):66─70,2019