タイトル
第59巻第3号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (880K)
Article in Japanese

─ 総説 ─

免疫チェックポイント阻害薬の現状と展望

各務 博1
1埼玉医科大学国際医療センター呼吸器内科

PD-1,CTLA-4とリガンドの結合を阻害する免疫チェックポイント阻害薬は,長期生存効果を示す点で,これまでの治療薬と大きく異なっている.がん細胞そのものを標的とする,細胞障害性抗がん剤,分子標的治療薬は,腫瘍縮小や生存期間の延長という臨床効果を示してきた.しかし,Goldie-Coldmanによって予測されていた遺伝子変異集積に基づく自然薬剤耐性メカニズムから逃れることはできなかった.免疫チェックポイント阻害薬は,neoantigenを認識してがん細胞を破壊するT細胞免疫活性を上げることで,遺伝子変異をより多く集積した細胞を優先的に死滅させるという性質を持つ.これは,遺伝子変異集積による自然薬剤耐性を克服するのに重要な特性といえる.PD-1はがん抗原特異的T細胞機能抑制に重要な分子であり,その阻害薬は今後も中心的役割を果たすと考えられる.一方で,より多くのがん患者に長期生存をもたらすために,既存治療や新たな免疫関連分子を標的にした治療薬と,相乗効果を狙った複合免疫療法が始まろうとしている.最善の治療シークエンスを生むために,抗腫瘍T細胞免疫メカニズムに基づいた免疫評価が求められている.
索引用語:免疫チェックポイント阻害薬, PD-1, PD-L1, CTLA-4, 肺癌

肺癌 59 (3):217─223,2019

ページの先頭へ