タイトル
第59巻第3号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (1458K)
Article in Japanese

─ 症例 ─

アファチニブが有効であった非感染性心内膜炎合併EGFR遺伝子変異陽性肺癌の1例

川本 有輝1, 早川 佳奈1, 中野 好夫1, 早川 隆洋1, 太田 敬之1, 木村 桂三2
紀南病院 1内科, 2循環器内科

背景.非感染性心内膜炎はTrousseau症候群の一つとして知られているが,脳梗塞を発症して初めて診断されることが多く診断が難しい.またその治療法はいまだ確立されておらず,予後は極めて悪い.症例.68歳男性,腰痛を主訴に当院を受診,腰椎に骨転移を疑う病変を認めた.原発巣精査の結果,原発性肺腺癌(cT1bN2M1b,cStage IVB,EGFR遺伝子変異陽性)と診断し,アファチニブを開始した.アファチニブ開始後に発熱があり,経胸壁心エコーを施行したところ大動脈弁に疣贅を認めた.抗菌薬,抗凝固薬を使用せず様子をみていたところ,発熱から10日目に疣贅の消失を認めた.複数回施行した血液培養は陰性であった.以上から,肺癌に合併した非感染性心内膜炎と診断した.EGFRチロシンキナーゼ阻害剤治療により肺癌も著明に縮小し,血栓症の再発もなく経過している.結論.脳梗塞発症前に非感染性心内膜炎を診断し,抗凝固薬を用いずとも分子標的療法のみで軽快した稀な1例を経験した.悪性腫瘍に伴う血液培養陰性の心内膜炎では本症を鑑別に挙げ,できるだけ早期に化学療法を開始することが重要である.
索引用語:肺癌, 非感染性心内膜炎, 分子標的薬, アファチニブ

受付日:2018年11月15日
受理日:2019年2月26日

肺癌 59 (3):248─253,2019

ページの先頭へ