タイトル
第59巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

エストラジオール産生による月経再開を認めた高齢女性のALK陽性肺腺癌の卵巣転移の1例

河角 敬太1, 田村 朋季1, 川尻 智香1, 西 達也1, 工藤 健一郎1, 久山 彰一1
1岩国医療センター呼吸器内科

背景.転移性卵巣腫瘍の中で肺・気管支原発は3.6%と少なく,またエストラジオール産生症例はさらに希少であると考えられる.症例.70歳女性.7年前に肺腺癌と診断され化学療法を受けていたが,病変は増悪傾向であった.ALK融合遺伝子陽性であることが判明したため5年前よりクリゾチニブを開始し,以後病変は良好にコントロールされていた.その後も肺病変は増悪なく経過していたが腫瘍マーカーの上昇と不正性器出血の出現を認め,さらにエストラジオールの高値も認めた.腹部CTを撮影したところ,6 cm大に腫大した右卵巣と子宮筋腫を認めた.上記より,肺腺癌の卵巣転移が疑われた.エストラジオールの高値を認め,子宮筋腫と卵巣の合併切除を行ったところ肺腺癌の卵巣転移と診断された.術後,腫瘍マーカーの正常化とエストラジオールの低下を認め,クリゾチニブをアレクチニブに変更し治療を継続している.以上のことから,卵巣への転移性病変によるエストラジオール産生の可能性が示唆された.クリゾチニブ投与で経過良好であったが,エストラジオール産生卵巣転移により増悪したALK融合遺伝子陽性肺腺癌の1例を経験した.
索引用語:ALK融合遺伝子陽性肺腺癌, 卵巣転移, エストラジオール

受付日:2018年8月21日
受理日:2019年3月4日

肺癌 59 (3):254─259,2019

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