タイトル
第59巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

肺腺癌化学療法中に耳痛と顔面神経麻痺を発症したGarcin症候群の1例

山根 高1
1高知医療センター呼吸器内科

背景.Garcin症候群は頭蓋底部の腫瘍疾患などにより一側性多発性に脳神経障害をきたしたもので,四肢麻痺および頭蓋内圧亢進症状を認めない.今回我々は,肺腺癌に対する化学療法中に左耳痛,左顔面神経麻痺が順に出現し,診断に苦慮したGarcin症候群の1例を経験したので報告する.症例.54歳男性.20XX年3月に腰痛を主訴に近医で転移性骨腫瘍が疑われ,当科紹介となった.精査にて原発性肺腺癌(cT1bN2M1b Stage IVA)と診断された.疼痛コントロール目的で腰仙骨部骨転移に対して緩和的放射線療法後,化学療法を導入した.20XX+1年5月より左耳痛,6月より左顔面神経麻痺が出現した.頭部造影MRIでは,左顔面神経麻痺などをきたす器質的疾患は指摘できなかった.臨床的にRamsay Hunt症候群を疑い,バラシクロビルとステロイド投与を行ったが,症状の改善はごくわずかであった.8月に左反回神経麻痺や舌咽神経麻痺が出現し,頭部造影MRI再検にて左頚静脈孔付近の頭蓋底骨転移を認めた.結論.肺癌加療中に耳痛や顔面神経麻痺が出現した場合には,頭蓋底骨転移を鑑別診断に挙げる必要がある.
索引用語:肺癌, Garcin症候群, 顔面神経麻痺

受付日:2019年2月12日
受理日:2019年4月6日

肺癌 59 (3):282─286,2019

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