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第59巻第3号目次 In Japanese

─ 編集後記 ─

編集後記

岩﨑 正之
東海大学医学部外科学系 呼吸器外科学

いよいよ厳しい暑さ到来の時期に突入しました.令和元年前半の学会シーズンを熟しながら,会員の皆様におかれましてはお忙しい毎日をお過ごしのことと推察致します.近年の蒸し暑さもそうですが,局地的な雨降りの量や形状も尋常ではなく,今までに経験したことのない様な環境の変化はおよそ昨今の肺癌治療に対する薬剤の選択・経済的環境に似ている様な気が致します.2019年ASCO年次総会も終了し,高騰してきているがんの薬物療法の状態にますます磨きがかかって麻痺してしまったのかと思わせる様な討論が繰り広げられました.また,地道な努力の結果に築き上げられてきたコンパニオン診断が遺伝子パネル検査の到来でその是非が問われる場面もありました.我が国での議論もこれからなされるものと思われます. 肺癌第59巻3号の総説は免疫チェックポイント阻害薬の現状と展望が詳細に解説され,遺伝子変異集積に基づく自然薬剤耐性メカニズムから逃れることができなかったことにも触れられて興味深く,また分子標的薬耐性の最前線からもドライバー遺伝子陽性肺がんに対する耐性メカニズムの最新情報も解説されています.免疫関連有害事象の管理とがん患者さんの意識などについて詳細に解説されており,机上に置いておくべき内容となっております.また9編の症例提示も非常に興味深いものとなっており,査読をいただいた先生方に深く感謝申し上げます.Trousseau症候群として認識の少ない非感染性心内膜炎に分子標的薬剤が効果あった症例や,高齢者女性に月経再開を認めたALK陽性肺腺癌の卵巣転移症例,クリゾチニブ投与後に複雑性腎嚢胞を発症したALK陽性肺癌症例にアレクチニブ,セリチニブが有効であった症例,稀なGarcin症候群の症例,化学療法後に切除可能であった縦隔胚細胞性腫瘍の症例など是非ともご一読いただきたいと考えます.新しい治療戦略の台頭により多くの選択肢を手にすることができました.テーラーメイド治療がいかなるものか考えさせられる毎日です. 外科治療の戦略も形を変えてくるのかもしれません. ご投稿いただいた先生方にも深く感謝いたしまして編集後記とさせていただきます.

肺癌 59 (3):332─332,2019

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