タイトル
第59巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

2年間で急速な増大を示した後縦隔の限局性悪性胸膜中皮腫の1例

竹藪 公洋1, 大畑 善寛1, 佐藤 未来1, 石川 慶大2, 川村 健2, 飛岡 弘敏3
北海道社会事業協会小樽病院 1呼吸器内科, 2呼吸器外科, 3病理診断科

背景.限局性悪性胸膜中皮腫は非常に稀な疾患で,標準治療は確立されていない.症例.55歳女性,石綿曝露歴なし.右側胸部痛で当院を受診した際,CT検査で右後縦隔領域に57×33 mm大の腫瘤陰影を認めた.CTガイド下生検で限局性悪性胸膜中皮腫が疑われた.胸腔鏡下に右後縦隔腫瘍摘出術を行った.病理組織学的に,低分化な上皮様異型細胞が充実性に増殖しており,腫瘍は壁側胸膜と臓側胸膜の間に存在し肺実質への浸潤は認めなかった.CalretininとD2-40が陽性,CEA,TTF-1は陰性で,上皮型の限局性悪性胸膜中皮腫と診断された.2年前に他院で撮影された腹部CTでは,同部位にわずか15×5 mm大の胸膜肥厚を認めるのみであった.しかし,急速な増大であるにも関わらず,局所進展にとどまり,びまん性の胸膜進展や遠隔転移をきたすことはなかった.術後補助化学療法を追加し,現在まで術後10ヶ月無再発生存中である.結論.限局性悪性胸膜中皮腫は,びまん性悪性胸膜中皮腫とは異なる病態である可能性がある.標準治療の確立のためには,症例の蓄積が必要である.
索引用語:限局性悪性胸膜中皮腫, びまん性悪性胸膜中皮腫, 診断, 手術, 予後

受付日:2019年3月20日
受理日:2019年6月10日

肺癌 59 (4):401─407,2019

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