タイトル
第59巻第4号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

昏睡状態から就労可能な状態まで治療で回復した肺小細胞癌による傍腫瘍性辺縁系脳炎の1例

東山 量子1,2, 加賀城 美智子2, 中島 治典2, 白木 晶2, 安藤 守秀2, 進藤 丈2
1国立がん研究センター中央病院呼吸器内科, 2大垣市民病院呼吸器内科

背景.傍腫瘍性神経症状は改善困難の報告が多い.積極的な抗腫瘍療法で救命し得た肺小細胞癌による辺縁系脳炎を経験したので,報告する.症例.60歳男性.痙攣を繰り返し,疎通・歩行が不能となった.精査で肺小細胞癌IIIB期,頭部MRIで辺縁系に高信号を認め,辺縁系脳炎と診断した.CBDCA+VP-16を開始した.Day 4痙攣が重責し,止めるため人工呼吸管理とした.Day 12痙攣消失と腫瘍縮小を確認し,抜管した.以後痙攣はなかった.抗Hu抗体は陰性と判明した.MRIで辺縁系高信号の改善を認め,化学療法継続とした.徐々に意識状態が改善し,独歩退院し就労復帰した.結論.一般に傍腫瘍性の神経症状は改善が乏しいが,抗Hu抗体が陰性の場合神経症状に対し治療効果が見込める可能性が指摘されている.肺小細胞癌は治療奏効率が高い腫瘍であり,PS不良でも治療で改善が期待できると考えた.本症例は抗Hu抗体の結果確認を待てない状況であり,人工呼吸管理して化学療法を継続した.結果,神経症状の改善が得られ救命できたと考える.治療奏効率が高い腫瘍による抗Hu抗体陰性の傍腫瘍性辺縁系脳炎では,PS不良例でも積極的な抗腫瘍療法で救命の可能性がある.
索引用語:傍腫瘍症候群, 肺小細胞癌, 抗腫瘍療法, 傍腫瘍性辺縁系脳炎, 痙攣

受付日:2019年3月21日
受理日:2019年6月11日

肺癌 59 (4):408─412,2019

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