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第59巻第5号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 総説 ─

COPD合併肺癌の成因

柴田 陽光1, 梅田 隆志1, 平井 健一郎1, 峯村 浩之1, 斎藤 純平1, 金沢 賢也1, 谷野 功典1
1福島県立医科大学医学部呼吸器内科学講座

喫煙生活習慣病である慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者における肺癌年間発生率は1%であると報告されている.気管支内視鏡検査によって観察される細胞異形成の程度は,呼吸機能が低下するにつれて増加する.さらに,マイクロサテライト不安定性は,本患者の痰において頻繁に観察されることが報告された.すなわち遺伝子変異は患者の気道で発生する可能性が高い.DNA修復能力の喪失は,本患者における肺癌の発生率の増加の機序と想定されるが,これまでゲノムワイド関連解析において関連性は示されていない.COPDは気道の慢性炎症性疾患である.エピゲノムワイド関連解析では,SOCS3のメチル化がCOPDと関連することが報告されており,このメチル化はCOPD患者の持続的な炎症と関連している可能性がある.Interleukin-1β中和抗体canakinumabは,動脈硬化症の臨床試験(CANTOS)において肺癌発生を有意に抑制した.さらに,いくつかのコホート研究では,吸入ステロイドがCOPD患者の肺癌発生率を抑制することが報告されている.これらの臨床的エビデンスは,慢性気道炎症がCOPD患者における肺癌の発症と関連していることを示唆している.
索引用語:肺癌, 慢性閉塞性肺疾患(COPD), 肺気腫, 炎症, DNA修復

肺癌 59 (5):447─452,2019

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