タイトル
第59巻第5号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

重症筋無力症合併硬化性胸腺腫の1切除例

峯 勇人1, 岡部 直行1, 髙木 玄教1, 深井 智司1, 山口 佳子2, 鈴木 弘行1
1福島県立医科大学呼吸器外科学講座, 2竹田綜合病院病理診断科

背景.胸腺腫は縦隔腫瘍全体の約20%を占め,最も頻度が高い.硬化性胸腺腫は,1994年にKuoによって初めて報告された比較的稀な胸腺腫の一亜型である.症例.症例は67歳男性.重症筋無力症の診断でステロイドパルス療法,免疫グロブリン大量療法を行った.胸部CT検査にて前縦隔に38 mmの軟部陰影が認められ胸腺腫が疑われたため,拡大胸腺腫摘出術を行った.病理学的所見で著しく硝子化した線維組織を認め,硬化性胸腺腫type B1,正岡分類I期,pT1N0M0,stage Iと診断した.結論.過去の報告例を含めた17例について検討したところ,硬化性胸腺腫では他の胸腺腫と比較して,性差,年齢,症状,腫瘍サイズに明らかな違いは指摘されなかった.一方で,硬化性胸腺腫に対する重症筋無力症の合併率が35.3%であり,やや高い傾向を示していた.また,本症例では術前にステロイドパルス療法,ガンマグロブリン大量療法を行っており,胸腺腫の組織像に影響を与えるという報告もあるが,過去の報告を検討すると本症例のように著しく硝子線維化した組織像は硬化性胸腺腫に特徴的であるといえる.今後の症例の蓄積により,硬化性胸腺腫の病理学的,臨床的特徴を明らかにすることが重要である.
索引用語:硬化性胸腺腫, 前縦隔腫瘍, 正岡分類, WHO分類, 重症筋無力症

受付日:2019年1月21日
受理日:2019年6月14日

肺癌 59 (5):467─470,2019

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