タイトル
第59巻第5号目次 In Japanese

─ 編集後記 ─

編集後記

大西 洋
山梨大学放射線科

過日,甲信・東海・関東・東北地方にかけて史上最強クラスの台風19号に被災された地域の方々に心からお見舞い申し上げます.「備えあれば憂いなし」をはるかに超えた災害であったかと拝察されますが,肺癌診療においては肺癌発症リスクを予期し,適切な治療を迅速に開始するための備えができているがことが,肺癌研究の目的の一つであると言えます.本誌(59巻5号)におきましては,このテーマに見事に応えた2編のinvited review articleが掲載されています. 1編目は,柴田陽光先生による「COPD合併肺癌の成因」で,包括的な遺伝子解析やエピゲノム解析の結果から,COPD患者における肺癌の易発性は気道の慢性炎症を背景としていると考えられ,一般住民の中から呼吸機能検査もしくは画像的にCOPD患者をスクリーニングし,特に炎症バイオマーカーが高値の患者に対してCTを用いて積極的に経過観察を行うことが求められるべきと述べられています.社会におけるCOPDの認知率を高め,肺癌高リスクのCOPD患者に対する吸入ステロイドなどによる抗炎症療法の是非の議論もなされています. 2編目は丹羽崇先生による「気管支鏡検査の新時代: Precision medicine 時代における肺癌気管支鏡診断」で,EBUSを用いた気管支鏡検査手法の進歩についてと,肺癌の組織診断精度向上が期待されるクライオバイオプシーについて概説し,次世代シークエンサーの利用も想定した高精度かつ適切な気管支鏡検査検体採取の重要性について述べられています.適切かつ迅速な治療法決定のために,症例により検査前確率が最も高い診断方法を選択し,検体採取後の処理も含めた診断精度向上への取り組みの重要性が説かれています. その他の論文も日常臨床に役立つ興味深い内容となっております.これからも,肺癌に対する「憂い」を低減するため,様々な「備え」となる質の高い論文の投稿をお待ちしております.また,査読を担当していただいた先生方に深く御礼申し上げます.

肺癌 59 (5):524─524,2019

ページの先頭へ