タイトル
第60巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

左上葉気管支分岐異常領域に発生した肺癌に対する1手術例

冨田 栄美子1, 福原 謙二郎1, 高瀬 直人2, 塚本 吉胤3, 明石 章則1
宝塚市立病院 1呼吸器外科, 2呼吸器内科, 3病理診断科

背景.近年の3D-CTや気管支鏡検査の精度向上によって気管支分岐異常を指摘される機会は増えているが,左上葉気管支分岐異常の報告は依然として稀である.今回,我々は左上葉気管支分岐異常を伴った肺癌に対して胸腔鏡下に手術を行ったので報告する.症例.76歳の男性.前医で急性心筋梗塞の治療時に施行した胸部CTで左肺尖部に19 mm大の結節影を指摘された.左上葉肺癌(cT1bN0M0 Stage IA2)を疑い,気管支鏡検査を施行したが診断に至らず,当院を受診した.術前に3D-CTを作成したところ,前医では指摘されていなかった左B1+2の転位性分岐異常と左B6欠損を認めた.術中診断で原発性肺癌と診断したが,併存症を鑑みて縮小手術を選択し左S1+2a+b亜区域切除を行った.術後3.5年が経過したが再発を認めていない.結論.左上葉気管支分岐異常領域に発生する肺癌は稀で,術式について一定の見解はないが,亜区域切除も術式の一つとして許容される可能性があると考えられた.また,リンパ節郭清に関しては,解剖学的にも近接する上縦隔リンパ節郭清は行う方が望ましいと考えられた.
索引用語:気管支分岐異常, 転位気管支, 肺癌, 手術

受付日:2019年10月10日
受理日:2019年11月30日

肺癌 60 (1):60─65,2020

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