タイトル
第60巻第2号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (1999K)
Article in Japanese

─ 症例 ─

転移性肺腫瘍の原発巣の鑑別を要し組織所見を経時的に観察し得た肺癌・直腸癌の重複癌の症例

伊藤 悠1, 伊藤 優1, 川島 英俊1, 山本 健嗣2, 金子 猛3, 角田 幸雄4, 前原 孝光2
横浜労災病院 1呼吸器内科, 2呼吸器外科, 3横浜市立大学大学院医学研究科呼吸器病学, 4横浜労災病院病理診断科

背景.重複癌の症例では多発転移性肺結節影を認めた場合,治療方針決定のため転移巣の組織診断が必要となる.我々は,直腸癌と肺癌の重複癌を認め,多発肺結節影に対し複数回胸腔鏡下肺切除術を行い,転移巣の組織診断に加えその組織所見を経時的に観察し得た症例を経験した.症例.63歳女性.左上葉肺癌と直腸癌があり,右肺に転移性肺結節影を認めていた.直腸癌は早期癌と判断され肺癌治療先行の方針とし,アファチニブの投与を開始した.左肺上葉の原発巣は縮小が認められたが,右肺結節影は増大が認められた.診断と治療方針決定のために胸腔鏡下右肺下葉部分切除術を施行し,右肺結節影は直腸癌肺転移の診断となった.直腸癌に対する腹腔鏡下直腸切除術施行後に,左肺癌に対して根治的肺切除術を施行しアファチニブ投与を終了した.その後再び右肺に多発転移性結節影の出現を認め,診断目的に胸腔鏡下右肺部分切除術を行った.6ヶ所の生検部位のうち2ヶ所は肺癌からの転移であったが,残りは直腸癌からの転移の所見であった.結論.重複癌では治療方針決定のため早期に転移巣の組織診断を行い,原発巣の切除術の時期を逸しないように留意すべきであると考えられた.
索引用語:肺癌, 直腸癌, 重複癌

受付日:2019年9月19日
受理日:2020年1月8日

肺癌 60 (2):109─114,2020

ページの先頭へ