タイトル
第60巻第2号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (624K)
Article in Japanese

─ 症例 ─

安全な周術期管理を行えた脊髄小脳変性症を合併した肺癌の1手術例

米井 彰洋1, 森山 裕一1
1宮崎善仁会病院呼吸器外科

背景.脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration:SCD)患者は,声帯の外転障害のため声門部が狭窄していることがある.そのため,全身麻酔後に気道狭窄症状が出現・増悪する危険性があり,注意が必要である.症例.症例は68歳男性,当科初診5年前にSCDを発症した.当院整形外科の左母趾陥入爪に対する術前胸部単純X線写真で左上肺野に結節影が指摘され,当科紹介となり,気管支内視鏡検査を行ったが確定診断を得ることができなかった.しかし,胸部CT上は肺腺癌を強く疑うものであったため,術中診断を用いた根治術を計画した.術中迅速針生検で腺癌の診断を得たため,胸腔鏡下左上大区切除術を施行した.SCD症例における声帯運動障害は術後の突然死のリスクとなるため,病型を把握した術前評価は重要であり,本症例も術前,および術後に気管支内視鏡にて声帯運動障害がないことを確認した.結論.SCD症例においても周術期における入念な気道評価を行い,CVCI(cannot ventilate and cannot intubate)対策を講じれば,安全な周術期管理を行うことができると考えられた.
索引用語:脊髄小脳変性症, 原発性肺癌, 全身麻酔, 分離肺換気

受付日:2019年11月21日
受理日:2020年1月22日

肺癌 60 (2):120─124,2020

ページの先頭へ