タイトル
第60巻第3号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

腎移植後免疫抑制療法中のROS1陽性進行非小細胞肺癌に対してクリゾチニブを投与した1例

高尾 俊1, 益田 武1, 山田 貴弘1, 堀益 靖1, 中島 拓1, 宮本 真太郎1, 岩本 博志1, 藤髙 一慶1, 濱田 泰伸1, 服部 登1
1広島大学病院呼吸器内科

背景.クリゾチニブはROS1融合遺伝子陽性進行肺癌に対する分子標的治療薬である.本剤の代謝にはCYP3A4が関与するため,CYP3A4の基質となる薬剤と併用した場合,血中濃度が上昇する.また,本剤は腎機能障害合併例でも血中濃度が上昇する.症例.53歳女性.肺腺癌stage IV(pT4N1M1a)ROS1融合遺伝子陽性に対して,クリゾチニブが導入された.腎移植術後のため,CYP3A4の基質となるエベロリムスを内服中であり,かつ腎機能障害も合併していたため,当初よりクリゾチニブの用量を減量して開始したが,投与開始後に多数の副作用が出現した.これは,クリゾチニブの血中濃度が中毒域に達したことによる事象と考えられたため,エベロリムスを中止し,ミコフェノール酸モフェチルを増量した.続いて,腎機能障害の影響も考慮して,クリゾチニブの投与量を漸減した.この対応により,副作用のコントロールと抗腫瘍効果が得られ,拒絶反応も適切に抑制することができた.結論.免疫抑制療法中かつ腎機能障害を合併している患者においても,投与量を調節することでクリゾチニブを安全に投与することが可能である.
索引用語:クリゾチニブ, 免疫抑制剤, 腎移植, 腎機能障害, エベロリムス

受付日:2020年3月4日
受理日:2020年4月5日

肺癌 60 (3):197─201,2020

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