タイトル
第60巻第4号目次 Japanese/English

download PDFFull Text of PDF (4618K)
Article in Japanese

─ 症例 ─

Cushing症候群を伴ったACTH産生肺定型カルチノイドの1切除例

園川 卓海1, 竹ヶ原 京志郎1, 井上 達哉1, 榎本 豊1, 寺崎 泰弘2, 臼田 実男1
1日本医科大学付属病院呼吸器外科, 2日本医科大学解析人体病理学

背景.肺カルチノイドは原発性肺悪性腫瘍の1~2%を占め,稀にadrenocorticotropic hormone(ACTH)産生を伴う.症例.42歳,女性.1年前より体重増加,満月様顔貌を自覚しており,2ヶ月前からの腰背部痛を主訴に当院を受診.特徴的な身体所見や,ACTH及びコルチゾールの上昇を認め,他の内分泌学的精査と合わせてCushing症候群と診断された.胸部CTで左肺上葉に腫瘍を認め,異所性ACTH産生腫瘍が疑われたため,左上葉切除術,リンパ節郭清術を施行した.病理診断は定型カルチノイドで,大動脈下リンパ節に転移を認めた.また,免疫染色でACTHが陽性であり,ACTH産生肺定型カルチノイド,pT1bN2M0,stage IIIAと診断された.術後,ACTH及びコルチゾールは一過性に低下したが,速やかに再上昇し,高値が遷延した.術後精査でその原因を説明する所見はなく,トリロスタン投与後,切除7ヶ月後にいずれも正常範囲まで低下した.現在,術後3年であるが,再発や症状増悪は認めていない.結論.特異的な術後ホルモン濃度の推移を辿ったACTH産生肺定型カルチノイドの1例を経験した.
索引用語:肺定型カルチノイド, 異所性ACTH産生腫瘍, リンパ節転移, Cushing症候群

受付日:2019年12月13日
受理日:2020年5月16日

肺癌 60 (4):358─363,2020

ページの先頭へ