タイトル
第60巻第5号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

胸腺腫術後19年目に切除した孤立性肺転移の1例

鈴木 幹人1, 加勢田 馨1, 政井 恭兵1, 朝倉 啓介1, 菱田 智之1, 林 雄一郎2, 淺村 尚生1
1慶應義塾大学医学部外科学(呼吸器), 2慶應義塾大学病院病理診断部

背景.胸腺腫は低悪性度腫瘍であり,根治切除後の遠隔転移再発は稀である.症例.70歳代,女性.19年前に胸腺腫type B1,pT3(右肺浸潤)N0M0 Stage IIIに対し,胸腺全摘,心膜および右肺上葉部分合併切除,術後放射線療法(50 Gy/25 Fr)が施行され,経過観察中であった.術後13年目の胸部CTにて,右肺下葉に0.8 cm大の境界明瞭な結節陰影を認め,その後,同結節が緩徐ながら増大を示したため,初回手術より19年後に診断・治療目的に胸腔鏡併用下右肺下葉楔状切除を施行した.肺結節の病理所見は,初回切除検体と同様,異型に乏しいCD3,TdT陽性の未熟リンパ球を背景に,AE1/AE3,CK19陽性の腫大核を有する細胞を認め,胸腺腫(type B1)の肺転移と診断された.術後23ヶ月の段階で,再発を示唆する所見を認めず,外来にて経過観察中である.結論.緩徐な増大を示した胸腺腫孤立性肺転移の1例を経験した.胸腺腫がtype A~B1の場合は,晩期再発の可能性を念頭におくことが肝要と考えられた.
索引用語:胸腺腫, 転移性肺腫瘍, 胸腺

受付日:2020年2月17日
受理日:2020年6月10日

肺癌 60 (5):401─406,2020

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