タイトル
第61巻第1号目次 Japanese/English

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Article in Japanese

─ 症例 ─

乳癌に対する放射線照射範囲内に発生した肺原発血管肉腫の1例

髙橋 智彦1, 滝沢 昌也1, 小林 弘明1, 白崎 浩樹2, 村田 亜香里2, 鈴木 淳也2, 岡藤 和博2, 中沼 安二3, 須藤 嘉子3
福井県済生会病院 1呼吸器外科, 2呼吸器内科, 3病理診断科

背景.肺を原発とする血管肉腫は非常にまれである.今回我々は,乳癌術後の放射線照射範囲内に発生した肺原発血管肉腫を経験したので報告する.症例.47歳女性.多発乳癌に対して左乳房部分切除術,術後残乳照射および化学療法を施行され,その後ホルモン治療を継続中.手術から8年経過後,職場健診の胸部X線写真で左肺野異常陰影および左胸水を指摘された.鑑別診断として乳癌肺転移,原発性肺癌,炎症性変化などが考えられた.気管支鏡下生検と胸水細胞診では悪性所見が得られず,診断目的に手術を施行した.術中所見では,左肺舌区の結節と血性胸水の貯留,壁側胸膜の多発結節を認めた.肺結節および壁側胸膜の部分切除を施行し,病理組織学的に肺原発血管肉腫および胸膜播種と診断した.術後1か月の胸腹部造影CTで,胸膜播種の増悪,肺門・縦隔および大動脈周囲リンパ節転移,多発肝転移を認めた.化学療法を行ったが奏功せず,手術から約6か月後に死亡した.結論.本症例は乳癌術後の放射線照射範囲内の肺野に発生した血管肉腫であり,放射線誘発肉腫である可能性が考えられた.
索引用語:肺原発血管肉腫, 放射線誘発肉腫

受付日:2020年7月29日
受理日:2020年10月5日

肺癌 61 (1):30─34,2021

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